伝説の女神・シャフメラン

ちょっと前の『マルディン紀行7(路地を散策)』の記事の中で、銅製品のお店の写真をのせています。覚えてらっしゃいますでしょうか?こちらです ↓
f0058691_23114697.jpg
その写真の左端に、ちょっと奇妙な怪物?妖怪?と思えるものの額が写っているんです。
そのことに、『地球散歩』のさらささんからコメントを頂いて、ちょうど私も「何なんだろう~」と不思議に思っていたので、調べてみることに。ああいう怪物系のものを見ると、どうしても真っ先にギリシャ神話を思い浮かべてしまいますので、その方向で調べてみたんですけれど、どうもシックリとこないんですよね。
顔が、どうもオリエンタルなんですよね。ギリシャ神話の怪物・妖怪系には似つかわしくないという。

f0058691_23124176.jpg
UPで載せてみます。

どうですか?太い眉にくっきりな目。トルコやペルシャっぽいですよねぇ。



f0058691_2314216.jpgそして、前回の『マルディン紀行8(建物考)』の中でもちょっとお知らせいたしました、上から3番目・部屋の中の銅版のお皿に描かれている絵。

これも、UPしてみます。

同じものなんですよねぇ。

今まで見たことのないものでしたので、周りのトルコ人にも聞いてみたり。でも、埒があかず。


そこで、偶然見つけた、『神魔精妖名辞典』というもの凄い情報量のサイト。こちらで質問させて頂く事にしました。管理人の武藤さま、お世話になりました!ありがとうございました!
そして、同時に、地元の観光局へも問い合わせてみました。
それで、この実体が明らかになったというわけです~。

これは、シャフメラン(Şahmeran)という〝アナトリアのヘビの女神〟なのだそうです。
家庭と女性を守護する地母神で世の中の秘密をすべて知ると言われているそうです。
アナトリアの、特に、南部・アダナ(Adana)近くのタルスス(Tarsus)という町や、南東部のマルディン(Mardin)でこの伝説が言い伝えられているのだそうです。

怪物だとか妖怪だとか、変なこと言ってごめんなさいね、シャフメラン!
私たち女性を守ってくれる、有り難い神様だったのですよ。

そして、このシャフメランには、興味深い伝説もありましたので、ついでに紹介させて頂きますね。
「何・何?」とおっしゃる方、続きは  「シャフメランの伝説」へどうぞ。

ブログ・ランキングに参加しています。ポチッと応援よろしくお願いします♪
☆トルコ情報☆


☆人気blogランキング☆




シャフメランの伝説

昔昔、あるところに、タフマスプ(Tahmasp)という若者がいました。
背が高く、肩幅の広い、色黒のハンサムな若者でした。
ある日、タフマスプはサソリに地中の洞穴へと導かれてゆきました。真っ暗で何も見えないその洞穴には、色とりどりの無数のヘビに混じって、何と、この世のものとは思えないほどに美しい顔をした女性がいるではないですか。

「恐がらないで!ようこそ。私はヘビの世界の女王・シャフメランです。あなたには何もいたしませんよ。私は、この世が興ったときから、ずっとこの世におります。今日からあなたは、私のお客様です。今日は、ここで横になってお休み下さい。お話は後ほどいたしましょう」
と言って、シャフメランはその場を去っていきました。
タフマスプは、恐怖におののきながらも、その場で眠りにつきました。

翌朝、タフマスプが目を覚ますと、シャフメランは豪華な食事を用意してタフマスプを見つめていました。
そしてタフマスプも、シャフメランから目をそらすことが出来なかったのです。
「タフマスプ、私は人間の、世の中の全てを知っています。よかったら、お話しましょう」と言って、シャフメランは語り始めました。来る日も来る日も語り続けました。そして、いよいよもう語るべきことがなくなってしまった頃、タフマスプは、そろそろ地上の人間の世界を恋しく思い始めたのでした。
そしてこらえきれずにシャフメランに打ち明けたのです。「あなたのことは好きですが、もうそろそろ地上に帰りたい」と。
シャフメランは悲しみに暮れましたが、タフマスプのあまりにもの恋しさには耐えられずに、地上に帰ることを許しました。ただし、こう付け加えて。

「タフマスプ、よく聞きなさい。帰ることを許しはしますが、帰ってしまうと私を裏切ることでしょう。そして、人間どもに私の住処を教えてしまうでしょう。でも愛は消えてしまわないということ。だから私はあなたを帰すことにします。あなたのことを思って。
でも、これだけは忘れないように。私のことは誰にも言わないこと。そしてどんなことがあっても他の者と一緒に水に入ることはしないように!」

タフマスプは地上に戻ってきました。そしてとある村で大工として働くことになりました。
時々あの洞穴へ足を運び、シャフメランに会いに行ったりもして、幸せな日々を過ごしていました。
しかし、平穏な日々はそう長くは続かなかったのです。
タフマスプの暮らす国の王様が、無慈悲にも不治の病に倒れてしまったのです。各地から腕のいい医者が呼ばれ治療に当たるも、回復の兆しは見えず。
そこに登場するのが悪大臣。王様の病気が治らないのは、ヘビのシャフメランのせいだと言うのです。
シャフメランを捕まえて肉の一片を食べると、王様の病はたちまち治ることでしょう、と。

悪大臣の話を聞いた王様は、全国にシャフメランの捕獲網を張らせます。
国民全員を集め、次々に浴場に連れて行きました。役人はとうとうタフマスプの住む村へもやって来ました。
タフマスプは勿論拒否しましたが、役人は強引に浴場へ連れて行きます。
そこで皆が目にしたものは.....。タフマスプの全身にはヘビのウロコがびっしりと貼り付いていたのでした。
役人はすぐさまタフマスプを捕まえ、大臣の元へと連れて行きました。
幾度となく拷問を受けた末、タフマスプはとうとう口を割ってしまったのです。

シャフメランは捕まえられ、王様の前に連れていかれます。
そこには、悲しみに打ちひしがれた、気まずそうなタフマスプが。
シャフメランは、振り向き、タフマスプに話しかけます。
「愛する人よ、あなたは自分の身のために私を裏切ったのではないですね。いつの日か言いましたよね、愛は消えることがないって。悲しむことはないですよ」
その言葉を聞き、タフマスプは益々気まずく恥ずかしくなるばかり。

「さて、あなた方に私の秘密を打ち明けましょう。誰が言ったのでしょう、私の尻尾を切って一口食べると、世の中の全てや秘密を知り得ることになるなどと。
誰が言ったのでしょう、私の頭を切って一口食べると、あの世に行き着けるなどと.....」
シャフメランが話し終わりもしないのに、あの悪大臣は突然大きな刀を持ち出し、シャフメランの体を真っ二つに切り裂いてしまったのです。
そして、尻尾から一かけの肉を切り取り、口に運びます。
続いてタフマスプも、シャフメランに対するあまりのもひどい仕打ちの後悔から、頭の肉を切り取り一口口に運びます。
悪大臣は、肉を食べるや命を落としてしまいました。
けれどもタフマスプは無事だったのです。というのは、シャフメランは最期の時に、自分の知識の全てを愛する人に捧げるように仕掛けたからなのです。
それからというもの、愛する人を失った悲しみから、タフマスプは山々を駆け巡り、国々を放浪している、ということです。

また、不治の病の王様は、悪大臣に続いてシャフメランの肉を食べたところ、見事病が治った、ということで、めでたし、めでたし。

そして、このシャフメランは、以来、ロクマーン・ヘキム(Lokman Hekim=薬草(ハーブ)調合師)のシンボルとしてアナトリア地方に伝わることとなります。
また、女性を守るシンボルとして、結婚前の若い女性の寝室にシャフメランの絵を掲げたりもされています。

*:…:*:…:*:…:*:…:*:…:*:…:*:…:*:…:*:……:*:…:*:…:*:…:*:…:*:……:*:…:*:…:*:…:*

というシャフメランの伝説は、なんとも悲しい恋愛物語なのです。
けなげなシャフメランがいたたまれないですね。愛する人に捧げるひたむきな愛情.....。ちょっとウルウルきちゃいましたぁ。

ところで、ヘビ伝説って、色んな国にもあると思うんですけれど、ヘビが医学と深い関係にあるというのも、この物語を読んで改めてわかりました。
WHOの旗に描かれている、ギリシャ神話のアスクレピオスの〝ヘビの杖〟は特によく知られているものでしょうか。
ここトルコでも、医者や看護師など医務に従事している方のシンボルも、あのヘビの杖です。
(日本ではどうなんでしょう。知りません.....)

【追記】 このシャフメラン伝説の時代背景は、おそらく南部アナトリアがペルシャに支配されていた頃のもののようです。(だいたい紀元前6世紀後半から紀元前4世紀前半)
調べてみたところ、伝説には色んな説があり、私が紹介しました説は一般的に言われているものなのですが、中にははっきりと王様はペルシャの王だと明記してあるものもありました。
そして、シャフメラン(Şahmeran)の〝シャフ(Şah)〟はペルシャ語の〝王(シャー)〟という意味ですので、アナトリアにおけるペルシャ起源の伝説ではないでしょうか。←これは、ここディヤルバクルの観光局の方も、おそらくそうでしょうとおっしゃってました。

ブログ・ランキングに参加しています。ポチッと応援よろしくお願いします♪
☆トルコ情報☆


☆人気blogランキング☆

[PR]

by yokocan21 | 2008-04-24 23:25 | 旅・散歩  

<< 大西洋を越えてやって来たバトン マルディン紀行・8(建物考) >>