トルコの吟遊詩人・アーシュク

昨年の記事になりますけれど、トルコ東部のエルズルム(Erzurum)という町の〝ジャー・ケバブ〟を紹介しました。その時、エルズルムの写真を色々と見ていて、はぁ.....とっても懐かしくなりました。

そこで、私のお気に入りの写真と共に、エルズルムをちょっと紹介してみたいなと思います。ただ、この写真でのエルズルムは大昔・15年ほども前のことですので、ご了承下さいね。(写真をスキャンしていますので、画像が粗いです)

いつもなら町の歴史などを書いていくのですけれど、今回はパス。こちらで詳しく書かれていましたので、参照下さい。この町も、トルコの古い町ならではの様々な歴史を背負った町なのです。ビザンティン帝国時代からの、とても歴史ある町です。

歴史もさることながら、私が好きなのは、あの町の深々(シンシン)とした佇まい。2度訪れたことがあるのですけれど、その2度とも夏の終わり。普通なら、深々だなんて言葉も浮かばない季節ですけれど、何故だかそういう言葉が浮かんできました。
というのも、標高が2000メートル位ある高地に開けた町で、夏でも高原特有の、朝晩が涼しいという(いえ、寒いくらい)気候も関係あるのかも。そして、敬虔な人の多い町で、古いモスクや神学校などもたくさんあり、とても落ち着いた雰囲気が印象に残っているから、かもしれないです。

今回は、滞在中にホテルの人に薦められた、ある場所を紹介します。
そこは、夜な夜なオジサン達が集まってくる、ある場所。(怪しい所じゃないですよ)

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こういう感じで、お店の真ん中に即席ステージを設けた(って、これ、テーブルです)、『民謡喫茶』なのです。
エルズルムの旧市街の一角にある、何の変哲もない、普通のオジサン御用達喫茶店ですけれど、毎晩、アーシュク(Âşık=吟遊詩人)の演奏があります。
ここエルズルムは、アーシュクの中心的都市で、有名なアーシュクも数多く輩出しているらしいです。

演奏されるのは、〝トゥルキュ(Türkü)〟と呼ばれる、いわゆる民謡。
楽器は、サズ(Saz)またはバーラマ(Bağlama)(※注)と呼ばれる、竿が長く胴体の丸い、弦楽器のみ。
民謡といっても、各自の持ち歌もあれば、吟遊詩人ならではの即興曲もあり。詩の内容も多岐にわたっていて、世界情勢や経済状況、はたまた歴史的なことなどなど、浪曲風の単調な旋律ながら、聞いていて飽きなかったです。
【追記】 《そして、このサズという楽器、これがいい味出しているんですよね。奏でる人によって、音が全然違って聴こえてきます。激しくかき鳴らされるかと思えば、優しく滑らかな調べを奏でたり。時に野太い男性的な強い調子、また時には女性的な柔らかい調子、と、演奏者によって様々な表情を見せてくれるんです。》


また、その日は、この写真のアーシュクともう一人アーシュクが出演され、二人で掛け合いもされました。(紹介しています画像は、掛け合いの模様)
同じ事柄を、二人で掛け合いながら、たぶん韻も踏みながら、演奏される様子は凄く迫力もあって、当時のよちよちトルコ語をもってさえ、ぐいぐい引き込まれていきました。
チャイ(=トルコの紅茶)を飲みながら、そうして、夜はゆっくりと更けてゆくのでした。(ちなみに、このお店には友人と一緒に行ってきました)

ところで、このアーシュクという吟遊詩人。
その昔は、サズを肩から担いで、まさに村から村を歩いて演奏・歌っていたそうなんですけれど、今ではそのようなことはないそうです。現在は、このような地元の喫茶店や、コンサートで演奏されているようです。
有名なアーシュクは、テレビ出演したり、カセット(当時のトルコはカセットが主流でした)を出したりと、活躍の場も、昔とは随分と変わってきているようです。
また、アーシュクは、もともとペルシャあたりから伝わってきたもののようで、お隣のアゼルバイジャンでも盛んなんだそうです。そんな背景もあって、トルコ・イラン・アゼルバイジャンからアーシュクの代表者たちが集まって、一緒に掛け合い演奏をやるというイベントもあるそうですよ。(そういうの、見てみたいなぁ)

こんな拙い説明では、いまいちわかりにくいですよね。で、↓で、この写真のアーシュク・Âşık Nuri Çırağı(アーシュク・ヌーリ・チュラーウ)さんの演奏を聴けますので、どうぞ。
ちなみに、このÂşık Nuri Çırağıさんは、この喫茶店の店長さんでもあります。なお、この演奏は、外国(西洋)文化に侵食されつつあるトルコの現状の嘆き節を歌っています。


そして、もうひとつ。その当時、むっちゃ有名だったというアーシュク・Âşık Reyhani(アーシュク・レイハーニ)の演奏も。↓

(トルコ在住の方、YOUTUBEを観れる環境でお願いします)

エルズルムには、サズの専門職人さんもいらして、その工房にもお邪魔したことがあります。
工房は町の中心部にあって、おじさんが一人で黙々と作業をされていました。(あぁ、あのおじさん、どうされているのかなぁ.....)
サズは、全て手作業なんだそうで、ものによっては細かく豪華な細工も入っていて、それは見事な職人技でした。(お店の写真がなくて残念)
「アーシュクの喫茶店に行ってきたよ~」なんて言うと、凄く喜んでくださって、色んなお話を聞けました。
サズの材料は、マツのような針葉樹だとか。(ただ、当時のトルコ語力では、その木が何の木なのかまではわからず)
エルズルムには、サズ職人は、そのおじさん一人だということ。
日本からもサズの注文を受けて、特別に製作したこと。(日本はトルコと違って湿度が高いため、材料の木の選別に苦労したことなど)
物を作っている人のお話は、いつも面白いです。私、トルコでも何処でも、職人さんや何かのクリエーターさんとお話することが、大好きなのです。


で、その喫茶店には、後日またお邪魔することになったのです。
そのときは、アーシュクの出演者が、何と5人!すごかったです~。いやぁ、お得でした。
喫茶店はチャージは払いますけれど、安いもので(当時のレートで100円位!)、飲み物はチャイのみというシンプルさ。
来場者の殆どはおじさんですけれど、中には子供や孫連れの人もいて、和やかな雰囲気でした。エルズルムの子供達は、小さな頃からアーシュクに慣れ親しんでゆくのでしょうね。

トルコから古くから伝わる(おそらく10世紀頃には、その原型が出来ていたそう)、アーシュク(吟遊詩人)。
決して華やかなものではないですけれど、いつの時代も民衆の心をとらえ、渋い活躍を続けられています。
こういう伝統芸能って、トルコも例外なくどんどん演奏者も減っており、伝承していくのが大変だと思います。トルコのテレビでも、お目にかかることは多くはありません。
こんなに伝統のある、そして魅力的な伝統芸能が、いい形で継承されていくことを願ってやみません。


※注   サズ(Saz)・・・・・バーラマ(Bağlama)ともいい、ジュラ(Cura)、タンブル(Tambur)など、トルコ伝統音楽を奏でる弦楽器の総称。
ジュラ(Cura)は小型のもので、タンブル(Tambur)は竿の長いタイプ。また、竿も長く胴部分も大型のものはディワンサズ(Divan sazı)という。一番標準的なサイズのものを、サズ(Saz)・またはバーラマ(Bağlama)と呼んでいる。詳しくは、こちらに載っています。


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次回は、エルズルムの大自然~。
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by yokocan21 | 2010-02-07 07:48 | 旅・散歩  

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